
花を詠んだ俳句・短歌
(約240首)
桜 在原業平 (9世紀)
世の中に たえてさくらの なかりせば
春の心は のどけからまし
梅 菅原道真 (10世紀)
東風吹かば にほひおこせよ 梅の花
あるじなしとて 春な忘れそ
柿 正岡子規 (19世紀)
柿食へば 鐘が鳴るなり 法隆寺
__________________
万葉集
大伴家持 柿本人麻呂
__________________
在原業平 菅原道真 紀貫之
紫式部 西行 藤原定家
__________________
松尾芭蕉 加賀千代女
与謝蕪村 小林一茶
__________________
正岡子規 高浜虚子
与謝野晶子 石川啄木
__________________
↓ 下へ
■ ■万葉集 783年頃 編纂
(まんようしゅう)
大伴家持 大伴旅人 柿本人麻呂
額田王 山上憶良 山部赤人
(詠み人の、あいうえお順)
あ か さ た な は ま~
■厚見王
(あつみのおおきみ)
やまぶき(山吹)
「蝦(かわづ)鳴く
甘南備河(かむなびがわ)に
かげ見えて
今か咲くらむ 山吹の花」
万葉集 厚見王
■有間皇子 640年~658年
(ありまのみこ)
すだじい(すだ椎)
「家にあれば
笥(け)に盛る飯(いひ)を 草枕
旅にしあれば
椎(しひ)の葉に盛る」
万葉集 有間皇子
■生玉部足国
(いくたまべのたりくに)
きく(菊)
「父母が
殿の後方(しりへ)の
百代草(ももよぐさ)
百代いでませ わが来たるまで」
(百代草=菊)
万葉集 生玉部足国
■忌部首
(いみべのおびと)
からたち(枸橘)
「からたちの
棘原(うばら)刈り除(そ)け
倉立てむ
屎(くそ)遠くまれ
櫛(くし)造る刀自(とじ)」
万葉集 忌部首
■恵行
(えぎょう)
ほおのき(朴の木)
「吾(わ)が背子(せこ)が
捧げて持てる ほほ柏
あたかも似るか
青き蓋(きぬがさ)」
万葉集 恵行
■大海人皇子 ~686年
(おおあまのみこ)
天武天皇
むらさき(紫)
「紫草(むらさき)の
にほへる妹(いも)を
憎くあらば
人妻ゆゑに
我恋(こ)ひめやも」
万葉集 大海人皇子
■大来皇女 661年~702年
(おおくのひめみこ)
天武天皇の娘
あせび(馬酔木)
「磯の上に
生ふるあしびを 手折らめど
見すべき君が ありといはなくに」
万葉集 大来皇女
■大舎人部千文
(おおとねりべのちふみ)
ゆり(百合)
「筑波嶺(つくばね)の
さ百合の花の
夜床(ゆとこ)にも
愛(かな)しけ妹(いも)そ
昼も愛(かな)しけ」
万葉集 大舎人部千文
■大伴池主 ~757年
(おおとものいけぬし)
かじのき(梶の木)
「秋の夜は
暁寒し 白栲(しろたへ)の
妹(いも)が 衣手(ころもて)
着る縁(よし)もがも」
(白栲=梶の木)
万葉集 大伴池主
なでしこ(撫子)
「うら恋し
わが背の君は 撫子が
花にもがもな
朝な朝(さ)な見む」
万葉集 大伴池主
↑ 上へ
■大伴坂上郎女
(おおとものさかのうえのいらつめ)
さかき(榊)
「ひさかたの
天の原(あまのはら)より
生れ来る(あれこる)
神の命(みこと)
奥山の賢木(さかき)の枝に
白香(しらか)つけ・・」
万葉集 大伴坂上郎女
にわうめ(庭梅)
「思はじと
言ひてしものを はねず色の
移ろひやすき
吾(わ)が心かも」
万葉集 大伴坂上郎女
ひめゆり(姫百合)
「夏の野の
繁みに咲ける 姫百合の
知らえぬ恋は 苦しきものそ」
万葉集 大伴坂上郎女
ねこやなぎ(猫柳)
「山の際(ま)に
雪は降りつつ しかすがに
この川楊(かはやぎ)は
萌えにけるかも」
(川楊 = 猫柳)
万葉集 大伴坂上郎女
__________________
↑ 上へ
■大伴旅人 665年~731年
(おおとものたびと)
★元号「令和」の引用元の万葉集
↓
うめ(梅)
「初春の令月にして
(しょしゅんのれいげつにして)
気 淑く 風和ぎ
(き よく かぜやわらぎ)
梅は鏡前の粉を披き
(うめはきょうぜんのこをひらき)
蘭は珮後の香を薫す
(らんははいごの
こうをかおらす)」
万葉集 序文
大伴旅人
(おおとものたびと)らが
西暦728年頃に、
福岡の太宰府近辺にてひらいた
「梅花の宴」にて詠んだもの。
たちばな(橘)
「橘の
花散る里の ほととぎす
片恋しつつ
鳴く日しそ多き」
万葉集 大伴旅人
ちがや(茅萱)
「浅茅原
つばらつばらに 物思へば
故りにし郷し 思ほゆるかも」
万葉集 大伴旅人
やぶかんぞう(薮萱草)
「萱草(わすれぐさ)
わが紐(ひも)に付く
香具山(かぐやま)の
故(ふ)りにし里を
忘れむがため」
万葉集 大伴旅人
__________________
↑ 上へ
■大伴家持 718年~785年
(おおとものやかもち)
あせび(馬酔木)
「池水に
影さへ見えて 咲きにほう
あしびの花を
袖に扱入(こき)れな」
万葉集 大伴家持
うつぎ(空木)
「卯の花を
腐(くた)す
霖雨(ながめ)の 水はなに
寄る木積(こづみ)なす
寄らむ児(こ)もがも」
万葉集 大伴家持
エゴノキ
「知左(ちさ)の花
咲ける盛りに 愛(は)しきよし
その妻の子と
朝夕に 笑みみ笑まずも」
(知左=エゴノキ)
万葉集 大伴家持
おみなえし(女郎花)
「女郎花 秋萩凌ぎ さを鹿の
露分け鳴かむ
高円(たかまど)の野そ」
万葉集 大伴家持
かきつばた(杜若)
「かきつばた
衣(きぬ)に摺(す)りつけ
丈夫(ますらを)の
着襲(きそ)ひ猟(かり)する
月は来にけり」
万葉集 大伴家持
かたくり(片栗)
「もののふの
八十少女(やそおとめ)らが
くみまがふ
寺井の上の
堅香子(かたかご)の花」
万葉集 大伴家持
くぬぎ(椚)
「紅(くれない)は
移ろふものそ 橡(つるばみ)の
馴れにし衣に
なほ及(し)かめやも」
万葉集 大伴家持
こうやぼうき(高野箒)
「始春(はつはる)の
初子(はつね)の今日の
玉箒(たまばはき)
手にとるからに
ゆらぐ玉の緒」
玉箒(たまばはき)
=こうやぼうき
万葉集 大伴家持
このてがしわ(児の手柏)
「奈良山の
児の手柏の 両面(ふたおも)に
かにもかくにも
倭人(こびひと)の 徒(とも)」
万葉集 大伴家持
しょうぶ(菖蒲)
「ほととぎす
今来鳴き初(そ)む
菖蒲草(あやめぐさ)
かづらくまでに
離(か)るる日 あらめや」
(菖蒲草(あやめぐさ)
= 菖蒲(しょうぶ))
万葉集 大伴家持
「ほととぎす
待てど来鳴かず
菖蒲草(あやめぐさ)
玉に貫(ぬ)く日を
いまだ遠みか」
万葉集 大伴家持
すもも(李)
「わが園の
李(すもも)の花か 庭に散る
はだれのいまだ
残りたるかも」
万葉集 大伴家持
せんだん(栴檀)
「珠に貫く
楝(あふち)を宅に
植ゑたらば
山ほととぎす 離れず来むかも」
(楝=栴檀)
万葉集 大伴家持
たけ(竹)
「わが屋戸(やど)の
いささ群竹(むらたけ)
吹く風の
音のかそけき
この夕(ゆうべ)かも」
万葉集 大伴家持
たぶのき(椨の木)
「磯の上の
都万麻(つまま)を見れば
根を延へて
年深からし 神さびにけり」
(都万麻 = たぶのき)
万葉集 大伴家持
なつふじ(夏藤)
「わがやどの
時じき藤の めづらしく
今も見てしか
妹が笑(ゑ)まひを」
(時じき藤 = 夏藤)
万葉集 大伴家持
なでしこ(撫子)
「わが屋戸に
まきし撫子 いつしかも
花に咲きなむ
なそへつつ見む」
万葉集 大伴家持
「久方の
雨は降りしく 撫子が
いや初花に 恋しきわが背」
万葉集 大伴家持
にわうめ(庭梅)
「夏まけて
咲きたる唐棣花(はねず)
久方の
雨うち降らば 移ろひなむか」
(「唐棣花」は庭梅の古名)
万葉集 大伴家持
はぎ(萩)
「高円(たかまど)の
野べの秋萩 この頃の
暁(あかつき)露(つゆ)に
咲きにけるかも」
万葉集 大伴家持
「宮人の 袖つけ衣 秋萩に
匂ひよろしき
高円(たかまど)の宮」
万葉集 大伴家持
ひるがお(昼顔)
「高円(たかまど)の
野邊(のべ)の
容花(かほばな)
面影(おもかげ)に
見えつつ妹(いも)は
忘れかねつも」
(容花=昼顔)
万葉集 大伴家持
ほおのき(朴の木)
「皇祖神(すめろぎ)の
遠御代(とおみよ)
御代(みよ)は
い敷き折り
酒(き)飲むといふそ
このほほ柏」
万葉集 大伴家持
まんりょう(万両)
「吾が屋前(には)の
花橘の いつしかも
珠(たま)に貫(ぬ)くべく
その実成りなむ」
万葉集 大伴家持
「この雪の
消残る(けのこる)時に
いざ行かな
山橘の 実の照るも見む」
(山橘=十両:薮柑子)
万葉集 大伴家持
もも(桃)
「春の苑(その)
紅(くれない)匂ふ 桃の花
下照る(したでる)道に
出(い)で立つ
少女(をとめ)」
万葉集 大伴家持
やどりぎ(寄生木)
「あしひきの
山の木末(こぬれ)の
寄生(ほよ)取りて
挿頭(かざ)しつらくは
千年(ちとせ)寿(ほ)くとぞ」
万葉集 大伴家持
ゆり(百合)
「あぶら火の
光に見ゆる わが蔓(かずら)
さ百合の花の
笑(え)まはしきかも」
万葉集 大伴家持
__________________
↑ 上へ
■大伴四綱
(おおとものよつな)
ふじ(藤)
「藤浪(ふぢなみ)の
花は盛りに なりにけり
平城(なら)の都を
思ほすや君」
万葉集 大伴四綱
■大原今城
(おおはらのいまき)
しきみ(樒)
「奥山の
樒が花の 名のごとや
しくしく君に
恋(こ)ひわたりなむ」
万葉集 大原今城
__________________
↑ 上へ
■柿本人麻呂 662年~710年
(かきのもとのひとまろ)
いわたばこ(岩煙草)
「山萵苣(やまぢさ)の
白露しげみ うらぶるる
心も深く わが恋やまず」
(山萵苣 = 岩煙草)
万葉集 柿本人麻呂
ささ(笹)
「ささの葉は
み山もさやに さやげども
我は妹(いも)思む
別れ来(こ)ぬれば」
万葉集 柿本人麻呂
さねかずら(実葛)
「核葛(さねかずら)
のちも逢ふやと 夢のみに
祈誓(うけひ)わたりて
年は経(へ)につつ」
万葉集 柿本人麻呂
しらかし(白樫)
「あしひきの
山道(やまぢ)も知らず
白橿の 枝もとををに
雪の降れれば」
万葉集 柿本人麻呂
はまゆう(浜木綿)
「み熊野(くまの)の
浦の浜木綿 百重(ももへ)なす
心は思(も)へど
直(ただ)に逢はぬかも」
万葉集 柿本人麻呂
ひおうぎ(檜扇)
「ぬばたまの
夜さり来れば
巻向(まきむく)の
川音(かはと)高しも
嵐かも疾(と)き」
万葉集 柿本人麻呂
”ぬばたまの”は
黒に関連のある
「夜・夕・髪」などにかかる、
枕詞(まくらことば)として
用いられる。
ひがんばな(彼岸花)
「路(みち)の辺(へ)の
壱師(いちし)の花の
灼(いちしろ)く
人皆知りぬ わが恋ふる妻」
(壱師の花=彼岸花)
万葉集 柿本人麻呂
ひし(菱)
「君がため
浮沼(うきぬ)の池の
菱(ひし)摘(つ)むと
我が染(し)めし袖(そで)
濡(ぬ)れにけるかも」
万葉集 柿本人麻呂
ひのき(檜、桧)
「古(いにしえ)に
ありけむ人も 吾がことか
三輪(みわ)の檜原(ひばら)に
挿頭(かざし)折りけむ」
万葉集 柿本人麻呂
ふとい(太藺)
「上毛野(かみつけの)
伊奈良(いなら)の沼の
大藺草(おおゐぐさ)
よそに見しよは
今こそ勝(まさ)れ」
(大藺草 = 太藺)
万葉集 柿本人麻呂
みつまた(三叉)
「春されば
まず三枝(さきくさ)の
幸(さき)くあらば
後(のち)にも逢はむ
な恋(こ)ひそ吾妹(わぎも)」
万葉集 柿本人麻呂
■鴨足人
(かものたりひと)
すぎ(杉)
「何時の間も
神さびけるか 香具山の
鉾杉(ほこすぎ)がもとに
こけむすまでに」
万葉集 鴨足人
■紀女郎
(きのいらつめ)
= 紀小鹿(きのおしか)
ちがや(茅萱)
「戯奴(わけ)がため
わが手もすまに 春の野に
抜ける茅花(つばな)そ
食(め)して肥えませ」
万葉集 紀女郎
ねむのき(合歓の木)
「昼は咲き
夜は恋ひ寝(ぬ)る
合歓木(ねぶ)の花
君のみ見めや
戯奴(わけ)さへに見よ」
万葉集 紀女郎
■紀鹿人
(きのかひと)
まつ(松)
「茂岡に
神さび立ちて 栄えたる
千代松の木の 年の知らなく」
万葉集 紀鹿人
■久米禪師
(くめのぜんじ)
まゆみ(真弓)
「み薦(こも)刈る
信濃の真弓 わが引かば
貴人(うまひと)さびて
いなと言はむかも」
万葉集 久米禪師
■碁檀越
(ごのだんをち)
おぎ(荻)
「神風の
伊勢の浜荻 折り伏せて
旅寝やすらむ 荒き浜辺に」
浜荻 = 浜辺に生える荻
万葉集 碁檀越
__________________
↑ 上へ
■坂門人足
(さかとのひとたり)
つばき(椿)
「巨勢山(こせやま)の
つらつら椿 つらつらに
みつつ偲(しの)はな
巨勢(こせ)の春野を」
万葉集 坂門人足
■薩の妙観の命婦
(さつのみょうかんのみょうふ)
せり(芹)
「丈夫(ますらを)と
思へるものを
大刀(たち)佩(は)きて
かにはの田井(たい)に
世理(せり)ぞ摘みける」
万葉集 薩の妙観の命婦
■沙弥満誓
(さみのまんぜい)
わた(綿)
「しらぬひ
筑紫(つくし)の綿は
身につけて いまだは着ねど
暖けく見ゆ」
万葉集 沙弥満誓
■志貴皇子 668年~716年
(しきのみこ)
あし(葦)
「葦邊(あしべ)ゆく
鴨の羽交(はがひ)に 霜降りて
寒き夕(ゆふべ)は
大和(やまと)し思ほゆ」
万葉集 志貴皇子
わらび(蕨)
「石走る(いわばしる)
垂水(たるみ)の上の
早蕨(さわらび)の
萌え出づる春に なりにけるかも」
早蕨 = 若芽の蕨(諸説あり)
万葉集 志貴皇子
■聖武天皇 701年~756年
(しょうむてんのう)
奈良の大仏を造った
たちばな(橘)
「橘は
実さへ花さへ その葉さへ
枝(え)に霜降れど
いや常葉(とこは)の樹」
万葉集 聖武天皇
■衣通王(衣通姫)
(そとおりひめ)
にわとこ(接骨木)
「君が行き
日(け)長くなりぬ
山多豆
(やまたづ=にわとこ)の
迎へを往(ゆ)かむ
待つには待たじ」
万葉集 衣通王
__________________
↑ 上へ
■高宮王
(たかみやのおおきみ)
へくそかずら(屁糞蔓)
「かはらふぢに
延(は)ひおほとれる
屎葛(くそかづら)
絶ゆることなく 宮仕へせむ」
万葉集 高宮王
■高市黒人
(たけちのくろひと)
けやき(欅)
「早来(はやき)ても
見てましものを
山城(やましろ)の
高(たか)の槻群(つきむら)
散りにけるかも」
(槻(つき)= ケヤキ)
万葉集 高市黒人
■高市皇子 654年~696年
(たけちのみこ)
天武天皇の子
やまぶき(山吹)
「山吹の
立ちよそひたる 山清水
汲みに行かめど 道の知らなく」
万葉集 高市皇子
■橘諸兄 684年~757年
(たちばなのもろえ)
= 葛城王(かずらきのおおきみ)
あじさい(紫陽花)
「安治佐為(あぢさゐ)の
八重咲くごとく
弥(や)つ代にを
いませ我が背子(せこ)
見つつ偲ばむ」
万葉集 橘諸兄
かなむぐら(鉄葎)
「むぐらはふ
賤(いや)しき屋戸(やど)も
大皇(おほきみ)の
座(ま)さむと知らば
玉敷(し)かましを」
むぐら = かなむぐら
万葉集 橘諸兄
せり(芹)
「あかねさす
昼は田たびて ぬばたまの
夜の暇(いとま)に
摘(つ)める
芹子(せり)これ」
万葉集 橘諸兄
■田辺福麻呂
(たなべのさきまろ)
ちからしば(力芝)
「立ち易(かわ)り
古き都と なりぬれば
道の芝草
長く生(お)ひにけり」
万葉集 田辺福麻呂
ふじ(藤)
「藤波(ふぢなみ)の
咲き行く見れば
霍公鳥(ほととぎす)
鳴くべき時に
近づきにけり」
万葉集 田邊福麻呂
__________________
↑ 上へ
■長意吉麻呂(長奥麻呂)
(ながの おきまろ)
さといも(里芋)
「蓮葉(はちすば)は
かくこそあるもの
意吉麿(おきまろ)が
家なるものは
芋(うも)の葉にあらし」
(うも=里芋)
万葉集 長意吉麻呂
すずな(菘)
(蕪(かぶ))
「食薦(すごも)敷き
あをな煮持ち来(こ)
梁(うつばり)に
行縢(むかばき)懸けて
やすむこの君」
(あをな=すずな)
万葉集 長意吉麻呂
なつめ(棗)
「玉掃(たまばはき)
刈り来(こ)鎌麿(かままろ)
室(むろ)の樹と
棗が本と かき掃かむため」
万葉集 長意吉麻呂
のびる(野蒜)
「醤酢(ひしほす)に
蒜(ひる)搗(つ)き
合(か)てて
鯛(たひ)願ふ
吾にな見えそ
水葱(なぎ)の羹(あつもの)」
万葉集 長意吉麻呂
■新田部皇子 ~735年
(にいたべのみこ)
天武天皇の子
はす(蓮)
「久方の
雨も降らぬか
蓮葉(はちすば)に
たまれる水の
玉に似たる見む」
万葉集 新田部皇子
↑ 上へ
■額田王 630年~690年
(ぬかたのおおきみ)
あかね(茜)
「茜(あかね)さす
紫野(むらさきの)行き
標野(しめの)行き
野守(のもり)は見ずや
君が袖(そで)振る」
万葉集 額田王
すすき(薄)
「秋の野の
美草(みくさ)刈りふき
宿れりし
宇治の京(みやこ)の
仮いおし思ほゆ」
(美草=薄)
万葉集 額田王
__________________
↑ 上へ
■間人大浦
(はしひとのおほうら)
まゆみ(真弓)
「天の原
ふりさけ見れば 白真弓
張りてかけたり 夜道はよけむ」
万葉集 間人大浦
■播磨娘子
(はりまのおとめ)
つげ(黄楊)
「君無くは
何(なに)ぞ身よそはむ
くしげなる
黄楊(つげ)の
小櫛(をぐし)も
取らむと思はず」
万葉集 播磨娘子
■藤原朝臣麻呂 695年~737年
(ふじわらのあそみまろ)
からむし(苧)
「むしぶすま
柔(なご)やが下に
臥(ふ)せれども
妹(いも)とし寝ねば
肌し寒しも」
(むし = からむし)
万葉集 藤原朝臣麻呂
■藤原鎌足 614年~669年
(ふじわらのかまたり)
大化の改新(645年)の中心人物。
「藤原家」の始祖。
さねかずら(実葛)
「玉くしげ
みむろの山の さなかずら
さ寝ずはつひに ありかつましじ」
万葉集 藤原鎌足
__________________
↑ 上へ
■三方沙彌
(みかたのさみ)
たちばな(橘)
「橘の
蔭(かげ)ふむ路(みち)の
八また(やちまた)に
物をぞ思ふ
妹(いも)に
逢(あ)はずして」
万葉集 三方沙彌
__________________
↑ 上へ
■山上憶良 660年~733年
(やまのうえのおくら)
あきのななくさ(秋の七草)
「秋の野に 咲きたる花を
指折り(およびをり)
かき数ふれば
七種(ななくさ)の花
萩の花 尾花葛花 撫子の花
女郎花 また藤袴
朝貌(あさがお)の花」
この歌がそのまま
「秋の七草」になった。
うめ(梅)
「春されば
まづ咲く宿の 梅の花
ひとり見つつや 春日暮らさむ」
万葉集 山上憶良
せんだん(栴檀)
「妹(いも)が見し
楝(あふち)の花は
散りぬべし
わが泣く涙
いまだ干(ひ)なくに」
(楝=栴檀)
万葉集 山上憶良
↑ 上へ
■山部赤人 700年~736年
(やまべのあかひと)
あかめがしわ(赤芽槲)
「ぬばたまの
夜の更けゆけば
久木(ひさぎ)生(お)ふる
清き川原に 千鳥しば鳴く」
久木(ひさぎ)= 赤芽槲
万葉集 山部赤人
あし(葦)
「和歌の浦に
潮みち来れば 潟をなみ
葦べをさして
鶴(たづ)鳴きわたる」
万葉集 山部赤人
ちがや(茅萱)
「印南野(いなみの)の
浅茅(あさぢ)押しなべ
さ寝(ぬ)る夜の
け長くしあれば
家し偲(しの)はゆ」
万葉集 山部赤人
けいとう(鶏頭)
「わが屋戸に
韓藍(からあい)
蒔(ま)き生(おほ)し
枯れぬれど
懲りずてまたも 蒔かむとそ思ふ」
万葉集 山部赤人
さくら(桜)
「あしひきの
山桜花 日(け)並べて
かく咲きたらば いと恋ひめやも」
万葉集 山部赤人
すみれ(菫)
「春の野に
菫摘(つ)みにと
来(こ)し我そ
野をなつかしみ
一夜(ひとよ)寝にける」
万葉集 山部赤人
ひおうぎ(檜扇)
「ぬばたまの
夜の更けゆけば
久木(ひさぎ)生(お)ふる
清き川原に 千鳥しば鳴く」
万葉集 山部赤人
”ぬばたまの”は
黒に関連のある
「夜・夕・髪」などにかかる、
枕詞(まくらことば)として
用いられる。
ふきのとう(蕗の薹)
「明日よりは
春菜(わかな)採(つ)まむと
標(し)めし野に
昨日も今日(けふ)も
雪は降りつつ」
万葉集 山部赤人
■弓削皇子 ~699年
(ゆげのみこ)
天武天皇の子
ゆずりは(譲葉)
「古(いにしへ)に
恋(こ)ふる鳥かも
弓絃葉(ゆづるは)の
御井(みゐ)の上より
鳴きわたりゆく」
万葉集 弓削皇子
■余明軍
(よのみょうぐん)
はぎ(萩)
「かくのみに
ありけるものを 萩の花
咲きてありやと
問いし君はも」
万葉集 余明軍
__________________
↑ 上へ
■詠み人知らず
=「作者不詳」なので、
花の名前順で紹介。
あ
あし(葦)
「難波人 葦火たく屋の
煤(す)してあれど
おのが妻こそ 常めづらしき」
万葉集
あずさ(梓)
「梓弓(あづさゆみ)
春山近く 家をらし
続(つ)ぎて聞くらむ
鶯(うぐひす)のこゑ」
万葉集
あせび(馬酔木)
「わが背子に
わが恋ふらくは 奥山の
あしびの花の 今盛りなり」
万葉集
「河蝦(かわず)鳴く
吉野の川の 瀧の上の
馬酔木の花ぞ
末(はし)に置くなゆめ」
万葉集
あわ(粟)
「千早(ちはや)ぶる
神の社(やしろ)し 無かりせば
春日の野邊(のべ)に
粟蒔(ま)かましを」
万葉集
いぬたで(犬蓼)
「わが屋戸の
穂蓼(ほたで)古幹(ふるから)
摘み生(おほ)し
実になるまでに 君をし待たむ」
万葉集
いね(稲)
「住吉(すみのえ)の
岸を田に墾(は)り
蒔(ま)きし稲
さて刈るまでに あはぬ君かも」
万葉集
えのき(榎)
「わが門(かど)の
榎(え)の実(み) もり食(は)む
百千鳥(ももちどり)
千鳥は来(く)れど
君ぞ来(き)まさぬ」
万葉集
おきなぐさ(翁草)
「芝付(しばつき)の
御宇良崎(みうらさき)なる
ねつこぐさ あひ見ずあらば
我(あれ)恋ひめやも」
(ねつこぐさ=翁草)
万葉集
おけら(朮)
「恋しけば
袖(そで)も振らむを
武蔵野の
うけらが花の
色に出(づ)なゆめ」
万葉集
おみなえし(女郎花)
「手にとれば
袖(そで)さへ匂ふ 女郎花
この白露に 散らまく惜しも」
万葉集
おもだか(面高)
「あしびきの
山澤(やまさは)
回具(ゑぐ)を
採(つ)みに行かむ
日だにも逢(あ)はせ
母は責(せ)むとも」
回具(ゑぐ)= 面高
万葉集
↑ 上へ
か
かえで(楓)
「子持山(こもちやま)
若かへるでの
黄葉(もみ)つまで
寝もと吾(わ)は思(も)ふ
汝(な)は何(あ)どか
思(も)ふ」
万葉集
かしわ(柏)
「稲見野(いなみの)の
あから柏は 時あれど
君を吾(あ)が思(も)ふ
時はさねなし」
万葉集
かつら(桂)
「黄葉(もみぢ)する
時になるらし
月人(つきひと)の
楓(かつら)の枝の
色づく見れば」
万葉集
かんあおい(寒葵)
「梨棗(なつめ)
黍(きび)に
粟(あは)つぎ
延(は)ふ葛の
後も逢はむと 葵花咲く」
(葵花=寒葵)
万葉集
ききょう(桔梗)
「朝顔は
朝露負(お)ひて 咲くといへど
夕影にこそ 咲きまさりけれ」
(朝顔=桔梗)
万葉集
きび(黍)
「梨棗(なしなつめ)
黍(きみ)に
粟(あは)嗣(つ)ぎ
延(は)ふ 田葛(くず)の
後も逢(あ)はむと
葵(あふひ)花咲く」
万葉集
くず(葛)
「ま葛原
なびく秋風 吹くごとに
阿太(あた)の大野の
萩の花散る」
万葉集
くぬぎ(椚)
「橡(つるばみ)の
衣(きぬ)は 人皆(ひとみな)
事無しと
いひし時より
着欲しく念(おも)ほゆ」
万葉集
橡(つるばみ)= くぬぎ
くわ(桑)
「足乳根(たらちね)の
母がそれ養(か)ふ
桑(くはこ)すら
願へば衣(きぬ)に
着すといふものを」
万葉集
「筑波嶺(つくばね)の
新桑(にいぐわ)繭(まよ)の
衣(きぬ)はあれど
君が御衣(みけし)し
あやに着欲(きほ)しも」
万葉集
けいとう(鶏頭)
「秋さらば 写(うつし)もせむと
わが蒔(ま)きし
韓藍(からあい)の花を
誰(たれ)か採(つ)みけむ」
万葉集
こなら(小楢)
「下毛野(しもつけの)
みかもの山の 小楢のす
まぐはし児(こ)ろは
誰(た)が 笥(け)か持たむ」
万葉集
↑ 上へ
さ
さいかち(皂莢)
「皂莢(かはらふぢ)に
延(は)ひおほどれる
屎葛(くそかづら)
絶ゆることなく
宮仕(みやづかえ)せむ」
皂莢 = さいかち
万葉集
ささ(笹)
「うちなびく
春さり来れば
小竹(しぬ)の末(うれ)に
尾羽(をは)うち触れて
鶯(うぐいす)鳴くも」
(小竹(しぬ)
= 女竹(めだけ))
万葉集
さねかずら(実葛)
「山高み
谷へに延(は)へる 玉かづら
絶ゆる時なく 見むよしもがも」
万葉集
じゅんさい(蓴菜)
「わが情(こころ)
ゆたにたゆたに
浮蓴(うきぬなは)
邊(へ)にも沖にも
寄りかつましじ」
(蓴(ぬなは)= 蓴菜)
万葉集
すぎ(杉)
「古(いにしへ)の
人の植ゑけむ 杉が枝(え)に
霞(かすみ)棚引く(たなびく)
春は来ぬらし」
万葉集
「味酒(うまさけ)を
三輪の祝(ほふり)が いはふ杉
手触れし罪か
君に逢ひ難(がた)き」
万葉集
すすき(薄)
「人皆は 萩を秋といふ
よし我は
尾花が末(うれ)を
秋とは言はむ」
(尾花=薄)
万葉集
すべりひゆ(滑り莧)
「入間道(いるまぢ)の
大家(おほや)が原の
いはゐつら
引かばぬるぬる
吾(わ)にな絶(た)えそね」
(いはゐつら = 滑りひゆ)
万葉集
↑ 上へ
た
だいだい(橙)
「吾妹子(わぎもこ)に
逢(あ)はず久しも
甘美物(うましもの)
阿部橘(あべたちばな=橙)の
こけむすまでに」
万葉集
たちあおい(立葵)
「梨棗(なしなつめ)
黍(きみ)に
粟(あは)嗣(つ)ぎ
延(は)ふ 田葛(くず)の
後も逢(あ)はむと
葵(あふひ)花咲く」
万葉集
つげ(黄楊)
「夕されば
床のへ去らぬ 黄楊枕
いつしかと汝(な)は
主待ちがてに」
万葉集
つつじ(躑躅)
「水伝ふ
磯の浦回(うらみ)の
岩つつじ
もく咲く道を また見なむかも」
万葉集
つばき(椿)
「あしひきの 山つばき咲く
八峯(やつを)越え
鹿(しし)待つ君の
いはひ妻かも」
万葉集
つゆくさ(露草)
「朝露に
咲きすさびたる
鴨頭草(つきくさ)の
日暮るるなへに
消(け)ぬべく思ほゆ」
(鴨頭草=露草)
万葉集
「月草に
衣は摺(す)らむ 朝露に
濡れての後(のち)は
移ろひぬとも」
万葉集
ていかかずら(定家葛)
「石綱(いわつな)の
またをちかえり
青丹(あおに)よし
奈良の都を また見なむかも」
万葉集
ところ(野老)
「皇祖神(すめろぎ)の
神の宮人(みやひと)
ところ葛(づら)
いや常重(とこしく)に
われかへり見む」
万葉集
↑ 上へ
な
なし(梨)
「露霜(つゆしも)の
寒き夕べの
秋風に もみちにけりも
妻梨(つまなし)の木は」
万葉集
「梨棗(なつめ)
黍(きび)に
粟(あは)つぎ
延(は)ふ葛の
後も逢はむと 葵花咲く」
万葉集
なでしこ(撫子)
「野辺(のへ)見れば
撫子の花 咲きにけり
わが待つ秋は 近づくらしも」
万葉集
「秋さらば
見つつ偲(しの)へと
妹(いも)が植えし
屋戸の撫子 咲きにけるかも」
万葉集
なんばんぎせる
「道のへの
尾花が下の 思ひ草
今更さらに
何をか思はむ」
(思ひ草=南蛮煙管)
万葉集
にら(韮)
「きはつくの
岡のくくみら 我摘(つ)めど
籠(こ)にも満たなふ
背なと摘まさね」
(くくみら=韮)
万葉集
ぬるで(白膠木)
「足柄の
吾(わ)を
可鶏山(かけやま)の
可頭(かづ)の木の
吾(わ)をかづさねも
かづさかずとも」
(可頭(かづ)の木=ぬるで)
万葉集
のいばら(野茨)
「道の辺(べ)の
うまらの末(うれ)に
這(は)ほ豆の
からまる君を
別(はが)れか行かむ」
(うまら=野茨)
万葉集
↑ 上へ
は
はぎ(萩)
「人皆は
萩を秋といふ よし我は
尾花が末(うれ)を
秋とは言はむ」
万葉集
「秋風は
涼しくなりぬ 馬並(な)めて
いざ野に行かな 萩の花見に」
万葉集
「わが岳(おか)に
さを鹿来鳴く 初萩の
花妻問ひに 来鳴くさを鹿」
万葉集
「高円(たかまど)の
野べの秋萩 いたづらに
咲きか散るらむ
見る人なしに」
万葉集
「指進(さしずみ)の
栗栖(くるす)の小野の
萩の花 花散らむ時にし
行きて手向けむ」
万葉集
ひえ(稗)
「打ちし田に
稗はあまたに ありといへど
擇(え)らえし吾ぞ
夜(よる)ひとり宿(ぬ)る」
万葉集
ひおうぎ(檜扇)
「茜(あかね)さす
昼は物思(も)ひ
ぬばたまの 夜はすがらに
哭(ね)にみし泣かゆ」
万葉集
ひるがお(昼顔)
「打日さつ
宮の瀬川の
容花(かほばな)の
恋ひてか寝らむ
昨夜(きそ)も今宵も」
(容花=昼顔)
万葉集
べにばな(紅花)
「紅(くれなゐ)の
八塩(やしほ)の衣(ころも)
朝(あさ)な朝(さ)な
馴(な)れはすれども
いやめづらしも」
万葉集
↑ 上へ
ま
まゆみ(真弓)
「白檀弓(しらまゆみ)
いま春山に
行く雲の 逝きや別れむ
恋しきものを」
万葉集
「南淵(みなぶち)の
細川山に 立つ壇(まゆみ)
弓束(ゆづか)纏(ま)くまで
人に知らえじ」
万葉集
めはじき(目弾)
「わが屋戸(やど)に
生(お)ふる土針(つちはり)
心ゆも
思はぬ人の 衣に摺らゆな」
(土針=目弾)
万葉集
もみじ(紅葉)
「子持山(こもちやま)
若かへるでの
黄葉(もみ)つまで
寝もと吾(わ)は思(も)ふ
汝(な)は何(あ)どか
思(も)ふ」
万葉集
↑ 上へ
や
やなぎ(柳)
「浅みどり
染めかけたりと 見るまでに
春のやなぎは
芽(も)えにけるかも」
万葉集
「ももしきの
大宮人(ひと)のかづらける
しだれ柳は 見れど飽かぬかも」
万葉集
やまぶき(山吹)
「花咲きて
実は成らずとも 長き日(け)に
思ほゆるかも 山吹の花」
万葉集
やまぼうし(山法師)
「この夕(ゆうべ)
柘(つみ)のさ枝の
流れ来(こ)ば
梁(やな)は打たづて
取らずかもあらむ」
柘(つみ)= 山法師
万葉集
ゆり(百合)
「道のへの
草深(くさふか)百合の
花咲(え)みに
咲(え)みしがからに
妻といふべしや」
万葉集
りゅうのひげ(竜の髭)
「あしひきの
山菅の根の ねもころに
我はそ恋ふる 君が姿に」
万葉集
「愛(かな)し妹(いも)を
何処(いづち)行かめと
山菅の
背向(そがひ)に寝しく
今し悔しも」
万葉集
(竜の髭(りゅうのひげ)の
古名を「山菅(やますげ)」
と呼んだ。
ちなみに、薮蘭(やぶらん)の
別名も「山菅」)
__________________
俳句・短歌 1 (万葉集)
俳句・短歌 2 (奈良、平安、鎌倉)
俳句・短歌 3 (江戸、明治以降)
__________________
「季節の花 300」の表紙へ
↑ 上へ
__________________
Copyright(C) Since 1997
Atsushi Yamamoto.
All rights reserved.